今回紹介するのは、英国トライアンフが1965年から1967年にかけて生産したクラシックスポーツカー Triumph TR4A。イタリアのデザイナー、ジョヴァンニ・ミケロッティによる美しいボディラインに、直列4気筒エンジンを搭載した2シーターのロードスター。
TR4Aは先代TR4の進化モデルであり、最大の特徴はリアサスペンションの刷新。車名の後ろに付く「IRS」は独立リアサスペンションを意味し、従来のリジッドアクスルに比べて乗り心地と安定性を大きく向上させている。1960年代の英国スポーツカー文化を象徴する一台であり、現在も世界中のクラシックカー愛好家を魅了し続けている。

エクステリア
EXTERIOR
TR4Aの外観をひと目見れば、この車が1960年代の英国スポーツカーであることがすぐに分かる。
長く伸びたボンネット、低く構えたボディライン、そして丸みを帯びたフェンダー。クラシックスポーツカーらしいプロポーションを持つロードスター。





このボディデザインを手掛けたのは、イタリアの著名デザイナー ジョヴァンニ・ミケロッティ。TR4で採用されたこのデザインは、それまでのTRシリーズよりも低くワイドで洗練されたスタイルを実現し、TR4Aにもその美しいラインが受け継がれている。

フロントにはクロームバンパーとシンプルなグリル、そして「TRIUMPH」のレタリングが配置され、クラシック英国車ならではの品格を感じさせる。長いボンネットにはキャブレタークリアランスのための控えめな膨らみが設けられ、スポーツカーらしい力強さをさりげなく演出している。



サイドビューでは、フロントからリアへと流れるシンプルなボディラインが印象的だ。張り出したフェンダーとワイヤーホイールの組み合わせは、まさにクラシックスポーツの王道。余計な装飾を排したデザインは、半世紀以上が経った今でも色褪せない魅力を放っている。




リアには「TRIUMPH」のレタリングとともに 「IRS」バッジ が装着される。これは独立リアサスペンション(Independent Rear Suspension)を採用したモデルであることを示すもので、TR4Aを象徴する特徴のひとつだ。

さらに、このモデルには「サリートップ」と呼ばれる特徴的なルーフシステムが用意されている。取り外し可能なルーフパネルを組み合わせた構造で、後のタルガトップを思わせるデザインとして知られている。
長いボンネットと短いデッキ、そしてオープンコックピット。
TR4Aのエクステリアは、1960年代の英国スポーツカー文化を今に伝える、非常に完成度の高いデザインと言えるだろう。
インテリア
INTERIOR






TR4Aのコックピットに座ると、まず目に入るのはクラシックカーならではの温かみのあるインテリアだ。
ウォールナットの木目ダッシュボードとクロームリングのメーターが並ぶ景色は、1960年代の英国スポーツカーらしい上品な雰囲気を醸し出している。TR4Aではダッシュボードに木目パネルが採用され、クラシックな質感を演出する重要なデザイン要素となっている。



ドライバーの正面には、大径のスピードメーターとタコメーターが配置され、その間に燃料計や水温計などの補助メーターが並ぶシンプルなレイアウト。必要な情報だけを視認しやすく配置したこの構成は、スポーツカーとしての機能性を重視した設計といえる。
センターコンソールにはショートストロークのシフトレバーが配置され、ドライバーと車の距離が非常に近い。TR4Aではサイドブレーキがシート横ではなく、シフトレバーの後方に移動した「フライオフ式」レイアウトが採用されており、スポーツカーらしい操作感を楽しむことができる。


シンプルなバケットシートとコンパクトなコックピットは、ドライバーを包み込むような空間を作り出している。装飾は決して多くないが、その分だけ素材の質感や機械的な操作感が際立ち、クラシックスポーツカーならではの魅力を感じさせる。
ステアリングを握り、長いボンネットを見渡すドライビングポジションは、まさに1960年代のロードスターそのもの。TR4Aのインテリアは、単なる車内空間ではなく、ドライバーが「運転そのもの」を楽しむために作られたコックピットと言えるだろう。
エンジン
MECHANISM
TR4Aに搭載されるエンジンは、排気量 2138ccの直列4気筒ユニット。英国スタンダード社が開発した「ウェットライナー式」と呼ばれる伝統的なエンジンで、TRシリーズのスポーツカーに長く使われてきた信頼性の高いユニットだ。




燃料供給にはツインキャブレターを採用。シンプルな機械構造ながら、アクセル操作に対して素直に反応するフィーリングが特徴で、クラシックスポーツカーらしいダイレクトな走りを味わうことができる。


電子制御が当たり前になった現代の車と違い、このエンジンは機械そのものの鼓動を感じさせてくれる存在だ。アクセルを踏み込むと、直列4気筒ならではの力強いサウンドとともに車体が前へ押し出される。
TR4Aの魅力は、単なるスペックではなくエンジンの鼓動を感じながら走るという、クラシックスポーツカーならではの体験にあると言えるだろう。
取材後記
memo

現代の車のように電子制御や快適装備が充実しているわけではない。
それでも、この車にはそれ以上の魅力がある。
例えば、休日の朝。
少し早起きしてガレージのシャッターを開け、このTR4Aのエンジンを始動する。
低く太い直列4気筒の鼓動を聞きながら、まだ交通量の少ない道をゆっくりと走り出す。
海沿いの道をオープンで流したり、山道を軽快に走ったり。
この車はスピードを競うためのものではなく、「走る時間そのもの」を楽しむためのスポーツカーだと感じる。
カフェの前に停めれば、きっと誰かが足を止めて眺めるだろう。
「いい車ですね」と声をかけられ、自然と会話が始まる。
クラシックカーには、そんな人と人をつなぐ力がある。
もしこのTR4Aを所有するなら、ぜひやってみたいことがある。
春や秋の気持ちのいい日に、目的地を決めずに走るドライブ。
お気に入りのカフェを見つけたり、小さな港町に立ち寄ったり。
そして時には、同じクラシックカーを愛する仲間たちとツーリングに出かける。
ワイヤーホイールを輝かせながら並んで走る光景は、きっと特別な時間になるだろう。
このTR4Aは、単なる移動手段ではない。
人生の中に、少しだけ豊かな時間を増やしてくれる一台だ。








