今回ご紹介するのは、名車SUBARU360 OverTop Super 1968年モデルです。

昭和43年(1968年)式のスバル360における「ベーシックモデル(スタンダード/デラックス)」は、10年にわたる熟成の極みに達した「究極のミニマリズム」を体現しています。

1968年、スバル360は翌年のR-2へのバトンタッチを控え、最も信頼性が高い最終系です。
洗練された心臓部: エンジンは空冷2ストローク2気筒の「EK32型」。デビュー当初の16psから、この時期には25psまで高められていました。
数値こそ控えめですが、低速域からの粘り強さと、2ストローク特有の軽快な吹け上がりは、日本の日常的な速度域において極めて実用的な「足」としての完成度を誇ります。

オートマチックな進化: 1968年当時のモデルには、ガソリンとオイルを自動で混合する「スバルマチック(分離給油方式)」が定着しています。
これにより、初期モデルのような給油時の煩わしい儀式から解放され、現代に近い利便性を手に入れていました。

派手なストライプやバケットシートを備えたSSに対し、ベーシックモデルは「てんとう虫」本来の愛らしいフォルムを維持しています。
質実剛健なインテリア: デラックス仕様では、メッキパーツのあしらいや、より快適なシート素材が採用されていますが、基本設計は不変です。
薄いドアパネルやシンプルなインパネは、航空機由来の軽量化思想の表れであり、無駄を削ぎ落とした美学が宿っています。
しなや
かな足回り: 4輪独立懸架サスペンションは、路面を優しく捉える設定です。
このしなやかさこそが、当時の劣悪な路面状況下で「スバルの乗り心地は素晴らしい」と絶賛された理由でもあります。

それは、日本のモータリゼーションを支えた偉大なスタンダードの、最後の輝きだったのです。





























