アウトビアンキA112 アバルトの世界へようこそ
今回ご紹介するA112は車台番号から1984年から1985年の最終モデルと思います。
わずか700Kgという車の楽しさは無限大に広がる

現代の車にはない『何か』がここにある。
皆さん、最近のスポーツカーに乗っていてこう思った事はありませんか・・確かに速いけど、どこか自分自身のドライビングではない・・
操られているような感覚。安全で速く走る事ができるけど、退屈で何か物足りない・・・
2000年代の今、車は大きく、重く、コンピューターによって賢くなりました。
しかし、その代償として『純粋な走りの面白さや衝動』を忘れかけていないでしょうか。

今回ご紹介するアウトビアンキA112アバルトは、言わば、その真逆を突っ走るクルマ。
1970年代から80年代にかけてヨーロッパの公道を席巻し、今もなお世界中にファンを持つ伝説のホットハッチがA112 アバルトです。

そもそも街乗りを楽しむ可愛いクルマとして誕生したアウトビアンキの軽さとパッケージに目をつけた『カルロ・アバルト』
最初はカリカリのレースマシンを提案した。982ccの排気量から108hpという出力をマークしたプロトティーポは生産化される事なく試作車に終わった。
その後、フィアットの982ccエンジンをベースに58hpを発揮し、150kmの最高速度を誇るアバルトとして1971年には日本でも販売されることになった。
1974年には1050ccとなり、さらにチューニングを煮詰め70hpまでパワーを高めた。

圧倒的に魅力的なのは、『速度』ではなく『体感』が勝る圧倒的な軽さだ。
現代のスポーツカーの主流が1500kgというところからすると半分以下の700kg
馬力こそ70phと非力だあるが、アクセルを踏み込めばダイレクトに弾けるような加速が感じられる。

五感を刺激する『アバルト・マジック』とは・・
ウェーバーキャブが空気を吸い込む吸気音、アバルト伝統の秋ゾーストノートが奏でる官能的なサウンド。
パワーステアリングなど無いダイレクトなステアリングは路面の状況をドライバーに伝える。
地面を這うように走る感覚。そのスピード感は日常の60kmがエキサイティングなロードへと変貌する。

イタリアンクラシックなデザインは、ただ戦闘的なスポーツというだけではなく、内装はシックで気品すらある。
張り替えられたシートもフォットな気分を高めてくれる。

この車の価値はどこにあるのだろう・・・
今あえてこの車に乗る意味・・それは『自分の手で100%コントロールできる喜び』がそこにあるからだろう。
人と車が一体になって走る。自動運転化していく現代の車からすると真逆の逆立ちしても味わう事ができない『贅沢』がここにある。
サソリの毒は脳まで届き、完全にやられてしまうわけです。

ゴーカートのようなフィーリングを感じられるのは、700kgという軽さと地上を這うような感覚のせいでしょう。
普通の交差点がエキシティングなコーナーリングへと変貌します。この感覚を味わえる車は、そんなに多くありません。

癖が強い車である事は間違いありません。
正しく知る事が大事です。
フロントにエンジンとミッションを詰め込んでいる為に重量の60%が前輪に集中しています。
その為に基本的に強目のアンダーステアです。言い方を変えれば、曲がりにくく外へと膨らみやすいという特徴を持っています。
しかし、リアサスペンションが特徴的な横置きリーフスプリングという割り切った構造ゆえに荷重移動が起こるとピョコピョコと軽快に動く。
これが独特の俊敏さを生み出している。

ドライビングのアドバイスをするとすれば・・
強烈なタックインを使いこなす事で、めちゃくちゃ楽しく、面白く走らせる事が出来ます。
その為には、少々練習も必要。実は、朝練とかして、少しづつ出来るようになっていくのは、最高の喜びです。
人馬一体という感覚・・
コーナーの手前でキッチリとブレーキング。前輪にガツンと荷重を乗せたままハンドルを切る。
そこからアクセルを『パッと』一瞬オフにすると前輪を軸にしてリアがくるっと外側にスライド(タックイン)する・
この一瞬の挙動を利用して一気に車の向きをコーナーの出口へと向けるというものです。

前輪のトラクションだけで進む車だけにコーナーリングで慌ててアクセルオンすると前輪が空転してしまったり、アンダーが出て失速してしまう。
車両の向きが完全に出口に向くまではじっと我慢し、向きが変わった瞬間を見計らってアクセルオン!
こんな感じでしょうか・・・

A112のエンジンは上がよく回る高回転型ですから、美味しいパワーバンドは3000rpmから5500rpm
この回転を維持する為には、ヒール&トゥが大事になってきますね。
ね。面白そうでしょう。

今まで色んな車に乗ってきた経験からすると・・・
車重が軽くて、非力でよく回るエンジンの車をMTとアクセルワークを駆使して走らせるのが、一番楽しい、面白い!
値段も比較的リーズナブルで思い切り楽しめるアウトビアンキA112アバルトというクルマは、選択肢としてありな訳です。


































