RANGE ROVER CLASSIC SUFFIX-D / 1977
50年前、このSUVはまだ「SUV」と呼ばれていなかった。
1977年。
今から約50年前。
まだ「高級SUV」という言葉さえ存在しなかった頃、英国で一台の車が生まれました。
Range Rover。
悪路を走るための4WDでありながら、乗用車のように快適で、街にも出られる。
それまでの4WDとは少し違う考え方から生まれた車でした。
そして、その誕生から7年。
この1977年式 Range Rover Suffix-Dへと進化を遂げた。

この形がRANGE ROVER だった
今のRange Roverを知っている人が、この車を見ると少し驚くかもしれません。
2枚のドア。
細いピラー。
大きな窓。
低くシンプルなボディ。
余計なものがほとんどない。これがRange Roverの原点です。
現代のSUVが「何でもできる」方向へ進化していったのに対して、この初期型には、もっと明確な目的がありました。
悪路を走る。
遠くへ行く。
そして、そこで快適に過ごす。
そのための道具でありながら、なぜか美しい。
そこがRange Roverの面白いところです。

ルーブル美術館に展示された4WD
Range Roverの歴史には、自動車としては少し珍しい出来事があります。
初代Range Roverは、そのデザインと機能性を評価され、パリのルーブル美術館に展示されました。
4WDが美術館に?今なら少し不思議に思うかもしれません。でも、この車が登場した1970年代には、それだけデザインそのものが新鮮だったのでしょう。
「道具なのに美しい。」
CHASSIS No. 35625755D

Suffix-Dという、ひとつの区切り
初期のRange Roverには、製造時期や仕様の変化を示すSuffix(サフィックス)があります。
A、B、C、D……。
初期モデルから少しずつ改良が重ねられていく中で、その変化を追う手掛かりとなるものです。
そして、この車のコーションプレートには、35625755Dと刻まれています。
最後の**「D」**。それが、この車のSuffix-Dを示しています。
1977年式のこのモデルは、初期Range Roverのシンプルなスタイルを残しながら、製造を重ねる中で各部に改良が加えられていった時期の一台です。
つまり、この車は単に「古いRange Rover」なのではありません。
初期Range Roverの歴史を、実車として残している一台。
それが、このSuffix-Dです。
※Suffixごとの細かな仕様は、製造時期や仕向地によって異なる場合があります。

1975年製 Range Rover Suffix-D
英国王室に納入され、ウィンザー城で使用されていたとされる個体。当時のチャールズ皇太子がRange Roverとともに写る写真も残されています。
チャールズ皇太子とRange Rover
Range Roverと英国王室の関係を象徴する存在の一人が、現在のチャールズ国王です。皇太子時代からRange Roverを愛用していたことで知られ、1970年代のRange Roverとともに写る姿も残されています。当時の英国では、Range Roverはまだ新しいカテゴリーの車でした。それでも王室の人々がこの車を選んだ。そこには、単なるブランドイメージだけではなく、「どんな道でも走ることができるのに、乗り手の品格を損なわない」というRange Rover独自の魅力があったのかもしれません。
では、このSuffix-Dは?
今回ご紹介している1977年式 Range Rover Suffix-Dについて、私たちは「王室で使用された車」とはご紹介していません。
この車には、ニュージーランド、オーストラリアを経て日本へやってきたと考えられる海外での履歴があります。コーションプレートには、35625755Dと刻まれています。
王室車という特別な履歴ではありません。しかし、この車にはこの車だけの50年近い時間があります。英国で生まれ、海を渡り、いくつもの時間を重ね、現在、日本にいる。
王室が選んだRange Roverとはまた違う、この一台だけの物語です。

なぜ、2ドアなのか。
現在のRange Roverを知っていると、2ドアのRange Roverは少し不思議に感じるかもしれません。
しかし、初代Range Roverは2ドアから始まりました。4ドアモデルが登場するのは、その後です。つまり、この2ドアというスタイルは、「古いから2ドア」ではなく、
「Range Roverが生まれた頃の姿」なのです。
ショートホイールベースのコンパクトなボディ。
大きなガラスエリア。細いピラー。そして、シンプルな2ドアボディ。
現代の大型SUVとは違う、軽快な雰囲気があります。悪路では車両感覚をつかみやすく、狭い道でも取り回しやすい。
そして何より、この形だからこそ、Range Roverらしい。私はそう思います。

この一台には、海を越えた履歴がある。
ここから、このRange Rover実車の話です。
「1977年式」「3.5L V8」「2ドア」「Suffix-D」といったスペックに目が行きます。
でも、私たちがもう一つ知りたいと思ったのは、「この一台は、50年近くの時間をどこで過ごしてきたのだろう?」ということでした。
手掛かりになったのが、現車のコーションプレートに刻まれた、35625755DというシャシーNo.です。
この番号をもとに海外の記録をたどっていくと、興味深い履歴が見えてきました。

海外販売記録より。VIN 35625755D / Mileage 114,235km

MASAI RED
Dutton Garageの記録では、この車のボディカラーも、Masai Redとされています。
そして現在の車両もMasai Red。これも、この車の過去を追ううえで興味深い一致です。
約50年前に英国で生まれた一台が、ニュージーランド、オーストラリアを経て、現在は日本にあります。
写真では、かなり鮮やかな赤に写ることがあります。でも、実車はもう少し落ち着いた色合い。赤の中に茶色を感じる、クラシックRange Roverによく似合うカラーです。
光の当たり方によっても表情が変わります。このあたりは、写真だけではなかなか伝わりません。ぜひ実車を見ていただきたいところです。

そして、もう一つ。
この車が海外で販売されていた頃の姿が、動画として残っています。
YouTubeに公開されている、1977 Range Rover Classic #justarrivedという動画です。https://youtu.be/vTrm91YUzZI?si=VNHHCagFgdgRX4Fg
日本に来る前の、この車の姿が映像として残っている。クラシックカーの履歴を調べていると、こうした古い写真や動画が見つかることがあります。
それだけで、その車が生きてきた時間を少し身近に感じられます。

今、このRange Roverは日本にいる。
約50年前。英国で生まれた。ニュージーランドを走った。オーストラリアへ渡った。そして現在、日本にある。
一台の車が、これだけの距離を移動してきました。
約50年前のボディライン
この車を横から見ると、現在のSUVとの違いがよく分かります。低い。細い。そしてシンプル。大きなホイールを履かせたり、ボディに複雑なプレスラインを入れたりすることもありません。それでも、妙に存在感があります。むしろ、余計なものがないからこそ、今見ても古さを感じさせない。これが初期Range Roverのデザインなのだと思います。

ダッシュボードもリフレッシュ
以前、この車にはダッシュボードに割れがありました。現在は修復済みです。クラシックカーですから、完全に現代の車と同じような雰囲気にする必要はありません。
むしろ、この年代らしいインテリアの雰囲気を残しながら、気持ちよく乗れる状態にする。そのバランスを大切にしています。
そして、V8
Range Roverといえば、やはりこのエンジンです。3.5L V8。キーを回してエンジンが目を覚ます。セルが回り、少し間を置いて、V8が始動する。
現代の車とはまったく違う感覚です。音も、振動も、アクセルを踏んだときの反応も違う。数字だけでは表せないものがあります。

きちんと手を入れてきました。
この車は、日本国内で整備を行っています。これまでに、エンジンOH・ニューピストンへの交換・キャブレターOH・マフラー製作などを行っています。
約50年前の車ですから、経年による部分まで何もかも新しくするという考え方ではありません。必要なところを確認し、手を入れながら、この車本来の雰囲気を残す。そういう仕上げ方です。

走行距離について
現在のメーターは、15,494を表示しています。この年代のオドメーターは5桁表示です。そのため、10万kmを超えて一周している可能性があります。
もし一周しているとすれば、100,000+15,494=115,494kmとなります。海外に残っている記録は、114,235kmそして、115,000kmです。
そのため、現在の15,494km表示は、これらの記録と照らし合わせると115,494km前後である可能性があります。ただし、記録がない為、断定は致しません。
距離は走っておりますが、エンジン・キャブ等のOHを施してあります。
乗ると、少し驚くかもしれません。
現代のSUVに乗り慣れていると、最初は少し戸惑うかもしれません。ハンドル。アクセル。ブレーキ。視界。そして、車体から伝わってくる感覚。全部がダイレクトです。
でも、少し走ると分かってきます。「なるほど。これがRange Roverなのか。」大きな窓から景色が入ってきて、ボンネットの先が見えて・・・これぞレンジ

V8の音を聞きながら走る。現代の車が「移動するための機械」だとすれば、この車は少し違います。運転することそのものが楽しみになる。そんな車です。
2ドアだから、意外と扱いやすい。
この車の魅力は、見た目だけではありません。2ドアのショートホイールベース。これが、実際に乗ってみると意外に扱いやすい。狭い道での取り回し。駐車するときの車両感覚。
そして悪路での取り回し。現代の大型SUVとは違う、軽快さがあります。古いから不便というだけではありません。このサイズ、この形だからこそ使いやすい。そんな場面があります。

エアコンについて
もちろん、現代の車と同じようにはいきません。エアコンはコンプレッサーが装着されていますが、現在はベルトを外しています。
今後、国産コンプレッサーなどを使用してシステムを引き直すことも可能でしょう。ここは、次のオーナー様がどのような使い方をするかによって、仕上げ方を考えていただければと思います。
完璧な車ではありません。
ここは、あえて書いておきます。このRange Roverは1977年式です。約50年前の車です。新車のように、何も手を掛けずに乗り続けられる車ではありません。
これからも整備が必要になるでしょう。部品を探すこともあるでしょう。時には手を掛けることを楽しむ必要もあります。でも、それもクラシックカーの一部です。
「所有する」より、「付き合う」。
この車は、買って終わりというタイプの車ではありません。ガレージに入れて、たまに眺める。週末にエンジンをかける。少し遠くまで走る。イベントに参加する。
そして、また整備する。そんな時間も含めて楽しむ車です。だから、「所有する」というより、「付き合っていく」。その言葉の方が、このRange Roverには似合う気がします。
ドアを閉める音。
最後に、少しスペックから離れます。ドアを閉める。「バンッ」と、現代の車とは違う音がする。キーを回す。V8が目を覚ます。シートに座る。細いピラーの向こうに景色が広がる。
そして、ゆっくり走り出す。たったそれだけなのに、「今日はこの車で出かけよう」と思わせてくれる。クラシックRange Roverには、そんな力があります。
1977年から続いてきた時間を、次の50年へ。
50年を走ってきた。
でも、この車の物語はまだ終わらない。
これから誰かのガレージに入り、誰かの休日をつくり、誰かと新しい景色を見る。
その時間が、また次の歴史になる。
Range Rover Suffix-D。
次の物語を、この車と。
『商品情報』
RANGE ROVER CLASSIC Suffix-D
Year 1977
Body 2-Door
Engine 3.5L V8
Transmission 4-Speed Manual
Colour Masai Red
Chassis No. 35625755D
Odometer 15,494km表示
※5桁オドメーターのため、走行距離については一周している可能性があります。海外記録との照合から115,494km前後と推定できますが、確定値ではありません。
ご見学について
高額なクラシックカーですので、購入をご検討の方には実車の確認をおすすめしています。写真では伝わらない色、質感、エンジン音、ドアを閉めた感触、そして実車の存在感。ぜひ実際にご覧ください。










































